カスタムキュー職人であるBill
Schick(ビル・シック)氏は1942年にルイジアナに生まれ育った。優れたビリヤードプレーヤーとして地元のプールバーを中心に活躍していたが、1970年に有名なプロ選手Buddy
Hall氏とSchick氏は、Schick氏自身の手で2年以内にその当時入手可能だったあらゆるキューに優るものを作ることができるか否かという賭けをした。
Schick氏は、自宅に機械を買い込み、取りつかれたように失敗を繰り返しながらもキュー作りを始めた。彼が愛用していたキューがGeorge
Balabushka(バラブシュカ)だったこともあり、George
Balabushkaキューが、彼のキュー作りについて必要なインスピレーションをかき立てるには大変役立ったと、Schick氏は今でも若者のような情熱をもって話している。
裕福な家庭環境に育った彼は気の向いたときにのみキュー作りをし、年間50本程度の最高級品しか作らず、その他の時間は家族と共に、専ら、釣り、キャンピング、ゴルフなどをして楽しんでいる。もちろん、宣伝広告などは一度も出したことはないが、地元のディーラー筋を中心に客は途絶えることがなく、常に1〜2年分以上の予約が入っている。
彼は職人として満足のいくキューだけを世に出すことを旨(むね)としているので、仕事を無理に急がせる客はお断わりしているという。金、銀、黒檀などの高価な素材を好んで使い、シンプルながら高尚で独特なデザイン嗜好と、時間をかけた丹念な職人の責任を感じさせる手仕事には、最高級品としての定評がある。